プロキオン(Procyon)は、こいぬ座α星、こいぬ座で最も明るい恒星で全天21の1等星の1つ。おおいぬ座のシリウス、オリオン座のベテルギウスともに、冬の大三角を形成している。また、冬のダイヤモンドを形成する恒星の1つでもある。
特徴
薄黄色の恒星で、距離は11.46光年と太陽系に非常に近い。実視連星だが、伴星が白色矮星であまりにも暗いため小望遠鏡では分離できない。主星と伴星は、太陽系から観測した角距離にして4.31秒角離れた軌道を、離心率0.40の楕円軌道で40.8年かけて公転している。
主星のプロキオンAは、同様に白色矮星の伴星を連れているシリウスと比較するとやや低温 (6,650K) で、一回り大きい(プロキオンの半径は太陽の2.048倍、シリウスは1.68倍)。温度の割に明るい(半径の大きい)恒星であり、主系列星から準巨星へ変化しつつあると考えられている。
主星プロキオンAの年齢27億年に対し、伴星のプロキオンBは13.7億年前に白色矮星に変化したと推定されている。その差約13億年が、核融合で輝く恒星としてプロキオンBが過ごした寿命に相当する。このことから白色矮星になる前のプロキオンBはおよそ1.9〜2.1太陽質量の恒星だったと見積もられている。なお現在のプロキオンBの質量は0.59太陽質量だがこれは恒星としての寿命末期に質量の放出が起きるためである。
将来の姿
0.1 〜 1億年以内にはプロキオンは赤色巨星へと進化すると思われる。この段階では、水素の核融合反応により生じたヘリウムが中心核にたまっており、水素の核融合はその周囲で継続しているが、ヘリウムの芯は大きな密度と重力で圧縮されて温度が1億度にも達し、それまで水素の核融合で生じた「灰」であったヘリウムの核融合が始まる為だと思われる。それに従って星の外層は膨張し、大きさは現在の80 - 150倍(半径 0.7 - 1.3 AU)に達する。一方で表面温度は低下するので、赤っぽく見えるようになる。
ヘリウムの核融合は炭素や酸素の原子核を生成するが、プロキオンは質量が小さいため(太陽の1.5倍程度)、それらが核融合を起こす温度には至らず、外層部の水素を大量に放出して惑星状星雲を形成し、残された中心核は白色矮星となって一生を終えると考えられる。
伴星の発見
プロキオンBはあまりにも暗いため、その存在が示唆されてから実際に姿が観測されるまで半世紀以上の歳月を要した。プロキオンの伴星は1844年にフリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセルによってシリウスの伴星と共に提唱された。シリウスと同様に、プロキオンの運動に影響を与える伴星が存在する可能性があるとされた。ベッセルは1840年頃には既にプロキオンに不可視の伴星が存在するというアイデアを持っていたが、論文として正式な形で世に出たのは1844年である。
プロキオンBは当時の技術では視認不可能であり、さらにシリウスと比べて主星の運動に与える影響が小さいため、実在するかどうかすぐにははっきりとしなかった。ベッセルの仮説は1862年のアルトゥル・アウヴェルスによる詳しい研究で確実なものとみなされるようになったが、この時点でもまだ伴星は視認されていない。
プロキオンBの姿を捉えたとする最初の確実な報告は1896年で、リック天文台の36インチ望遠鏡を用い観測を行ったジョン・マーチン・シェバーリによるものである。なおシェバーリ以前にも伴星を発見したという報告があったものの、シェバーリ以降に観測されている伴星と軌道が一致せず、誤りだと考えられている。
名称
学名は α Canis Minoris (略称は α CMi) 。固有名のプロキオン (Procyon) は、ギリシア語の Προκύων をラテン語表記したもので、「犬に先立つもの」を意味する。これは、犬の星とされるシリウスが東の地平線から昇ってくる少し前に、プロキオンが姿を現すことに由来する。2016年6月30日に国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループ (Working Group on Star Names, WGSN) は、Procyon をこいぬ座α星Aの固有名として承認した。
アラビア語では、「北のシリウス」を意味する「アッ=シウラー・アッ=シャーミーヤ (الشعرى الشامية, al-Shiʿrā al-Shāmīya) 」と呼ばれた。これもまたシリウスが「南のシリウス」を意味する「アッ=シウラー・アル=ヤマーニーヤ (al-Shiʿrā al-Yamānīya) 」と呼ばれたのに対して命名されたものである。
日本では、島根県地方で「色白 (いろしろ) 」と呼ばれる。これに対してシリウスは「南の色白」と呼ばれている。
脚注
注釈
出典
関連項目
- 近い恒星の一覧
- 明るい恒星の一覧
- プロキオンステークス
外部リンク
- SolStation.com procyon 2(英語)
- 『プロキオン』 - コトバンク




